一人でも家臣を持つ武士の家では、当主を継ぐ男子は数え年3歳で少年として扱われ一定の礼式を求められます。元服を迎える12歳頃までには、武術はもちろんのこと軍学から領地運営・外交・作法まで多岐に渡ることを学び取らなければなりませんでした。その為、祖父母や両親または養育係から学問のみを学ぶのではなく、教養を身につける為、しきたりや節句行事などの儀礼を通じて実践をしながら繰り返し学んで行く仕組みがありました。
春日会では武術を楽しく学んでいただきながら、武家の節句行事などに触れていただく機会を作り、体づくりや作法所作、教養までを体感していただけるように、古くから受継がれてきたしきたりなどをベースにカリキュラムを構成しています。
肥前春日流では、身体を作り基礎となる動きを造るための“練成”と呼ばれる運動メニューがあります。術を行うための可動域を担保し、持久力の基となる呼吸・筋肉・体幹を練り上げます。現代で言うサーキットメトレーニングと言ってよいでしょう。
この練成を行ってから型稽古に入ります。型は「運体」と呼ばれる効率的な身体使いの練習メニューになっています。
礼式や型には独特の所作が内包されています。道場での振る舞いや型の練習を重ねることで、意識することなく自然に美しい所作が身につくことも古武道の特徴といえます。
日本の武術は格闘技(個人技)ばかりではありません。人としての道を説くだけではなく、軍学や経営・農事から医療に関することまで、幅広い分野で相互に関り合う事で成り立っています。
江戸期以前の武士たちの中から、医師や芸術家が生まれたのは、このような背景があっての事でしょう。春日会では、この様な深い教養への入口を、武術を通して提供したいと考えています。